「この世界の片隅に」

映画「この世界の片隅に」を八丁座で見ました。

昨年亡くなったわたしの祖母は、
いつも昔の暮らしについて話してくれていました。
小さいころ海でとれた魚の話、
女学校を出て就職して市内で遊んだ話、
闇市の話、原爆の時に逃げのびた話…。
想像するしかなかったけど、想像できなくて、
いつもぼんやり聞いていました。
でも、この映画ではおばあちゃんの話に出てくる風景が、
全部スクリーンに映し出されていました。
ああ、これがおばあちゃんが生きた広島なんだーーー。
それだけで、冒頭から涙が止まらず。
親戚の家があり小さいころから馴染みのある江波や、
わたしの生まれた町、呉。
ある場面で出てくる病院は、なんとわたしの生まれた病院で、
主人公の嫁ぎ先の灰ヶ峰は1歳まで家族で住んでいた場所。
今スタジオのある本川周辺、相生橋。
いままで資料写真で見てきていたけど
どうにも実感がなかったものが、
この映画では、ああここはこんな風景だったんだ、
こういうふつうの人が暮らしていて
おばあちゃんやおじいちゃんもここにいたんだなあと
すぅーっと心に入ってきました。


広島県は、広島市以外にも空襲があった街はいくつかあるのに
原爆のことしか取り上げられないので
福山空襲も呉空襲も、最近まで知りませんでした。

「呉の人は空襲がさいさいあってかわいそうじゃねえ、
 広島は空襲がないけえ、広島に帰りんさい」

こういう台詞のひとつひとつが衝撃で、
知ってるのに、知らなかった。わかってなかったなあと。


膨大な取材、綿密な心理描写、この作品への愛と情熱…。
語り尽くせない。これが傑作なんですね。
つらくて再度見ることができるかわかりませんが、
いずれDVDを買いたいと思いました。
劇場ではロングランになる予感がします。
広島の人は、被爆建物でもある福屋・八丁座で観ることをおすすめします!


「この世界の片隅に」公式サイト
http://konosekai.jp/